扉が開かない原因は鍵じゃなくて建て付けでした

「わたしの家の玄関ドアは、何かの悪い呪いがかけられていて開かなくなってしまった」と言われたときは、その友達と縁を切ろうかと本気で考えました。
おそらくはカギが古くなったせいで回らなくなってしまったか、鍵穴にイタズラでもされたのかと予想はしましたが、そのことを話すと「それは自分も考えたのだがカギ自体は全く問題がない」と言うのです。
そこで実際に友人の家の玄関の様子を見に行ったところ、単に建て付けが悪いだけでした。
なるほど確かにカギ自体はスムーズに回りますから、それが原因だろうと決めてかかっていたなら、もしかしたらわたしも扉が開かないのは呪いが原因かもしれないと考えたかもしれません。

それではなぜ建て付けが悪くなったのでしょう。玄関ドアの蝶番は、開閉によって徐々に歪みが生じてくることがあるそうです。特に長い期間、特段なんの手入れもしないで使われ続ける玄関ドアは、たとえば何かをぶつけた拍子に、突然建て付けが悪くなってしまうことだってあるようなのです。
おそらく友達の家の玄関もそうした経年劣化によって生じた歪みが原因で、開閉に支障をきたすようになったのではないでしょうか。そこでわたしたちはその扉を修理することにしました。扉を開いた状態で蝶番のねじを締めなおし、必要な部分には潤滑油を入れたのです。しかし、そうした「手入れ」も空しく、友達の家の玄関はなおりませんでした。やはり素人仕事では無理だと判断し、仕方なく建具屋さんに依頼しました。

調査に来た建具屋さんはしばらく玄関の細部を確認していましたが、最後にこう言いました。「玄関ドア自体には問題がありません。あるとすれば、家自体の構造が歪んでいる可能性があります。家が建っている地盤に問題があるのかもしれません」
最初はそんな馬鹿なと思っていましたが、それから三日後、大雨にあとに友人宅の隣家が地盤の液状化で半壊しました。友達は引っ越しを検討しています。